2007年08月18日
(9)博士の愛した数式 小川洋子(2003)

「僕の記憶は80分しかもたない」
博士の記憶はきっかり1時間20分しかもたず、記憶は事故の前まで。博士の記憶がもたないことを幹に、数字への愛情やこどもへの愛情が枝葉になって、読み飽きずによめました。博士の数字ひとつ、ひとつの解説は数字の興味を拡げてくれるし、途中途中の博士の野球・阪神・江夏好きに記憶が確かにとまっていることと、博士の数字以外での人間性が描かれていて引き込まれる。博士のために、家政婦とその息子の√(ルート)が江夏のカードを苦労して探す場面などは気持ちがやわらかくなる。片親の√と無条件で子供を愛する博士の関係、特に博士の記憶障害を気遣い、母親に腹を立てる√の姿は、「博士は明日になれば忘れて元通り」という浅はかさを正し、母親の博士との向き合い方をピリリと引き締め、子供の純粋さと、博士への√の向き合い方が表現されている。気づけば博士のファンになっている自分に気づきました。
2007年03月14日
(6)血の味 沢木耕太郎(2000)

「中学三年の冬、私は人を殺した」
早熟な主人公と、銭湯で会うオカマと、学校と、父親と
中学三年、人殺しをした主人公の日々の生活。
妄想。思い出。殺人にいたるまでの経緯。
どうして人をl殺すことになったのか、誰を殺したのか、
なまなましい記憶とともに振り返る青い春。
井原というクラスメートが卑怯。
2007年02月11日
(4)涙そうそう 吉田紀子/吉田雄生(2006)

100円ではないですが、後輩から拝借して。
「泣いても、泣いても ―
溢れ出す、君への想い。」
母親の再婚相手にくっついてきた小さな女の子カオル。
「今日からあなたの妹になるのよ」といわれてもピンとこない。
妹の父親はどこかへ行ってしまうし、母親は病気で死んでしまう。
妹を守るのは自分、育てるのは自分、愛情をそそぐ。
洋太郎は自分の夢のため、妹のために働き詰め、
ついに妹は、洋太郎のいる本土の高校へ進学、
ふたり暮らし、そして念願の夢をはたすが、、、
妹がほしい、と考えるのは妹がいない男子なら想うもの。
ツラい状況も「なんくるないさ~」と笑ってのりきる明るさに
洋太郎のカオルへの無償の愛情、ひたむきに働く姿に
洋太郎目線でやさしい気持ちになりながら読めました。
2007年01月15日
(2)ミラクル 辻仁成

世の中は奇跡があふれてる、とはよく言ったもので、今日の情熱大陸ででてた梅佳代の写真もミラクルの瞬間の切り取りでした。おもしろい瞬間を写真にできるというのは簡単に見えて難しい。撮ろうと思ってきばっていても撮れるもんではない。写真を撮るのが生活の一部で、そうして過ごすのがごく当然でいれるから撮れるんだろうな、と。なんとなしにパチリが、あとからみたらよかったり、得てして思い出がくっついてくる写真はそういう写真だったりします。記念撮影や観光地で撮った写真は記念だったり、ぼくここにいってきましたけど、という写真で記憶が薄い。なにげないところで撮った写真ほどこころにも手元にものこってます。
「ミラクル」は、子供のころにあったのに、大人になると無くなってしまうものがたくさんある、というはじまり。かつて子供のときに見えていたものがどんなものだったのか残念なことに思い出すこともできない。物心つくころにはすでに母親を亡くしていた少年アルであったが、父親はそのことを息子に嘘をつき、真実を先延ばしに。アルはアルにしか見えない二人のとぼけた幽霊と過ごし、母親とはどんな人なのか、そこらじゅうの母親に自分の母親かと確かめる。
「ママは許してくれる人」「人間はずっとママに許されて生きていくんだよ」というふたりの幽霊の言葉を信じて、探すアルの姿が切ない。最後のワンシーン、アルはおとなになれたってことでしょうか。